ティントレットの絵を観る。先月「磔刑」(1550年 ソウマヤ美術館メキシコシティ)を観たが同じ作者だ。有名なティントレットは1518年~1594年の人で、この壁画はその最晩年、老齢の為未完成であった。それを息子のドメニコに引き継いで完成させた。だから親子二代で描いた別物と言える。
ドメニコ・ティントレット 「天国」 1588~94年 ドゥカーレ宮殿(イタリア・ヴェニス)
ドゥカーレ宮殿の大評議会の間の壁面を飾る、2260cm×910cmの大作である。何度も修復されているので、色とかが良く見えない。
画像処理して明るくしてようやく制作時の状態に少し近づけたか。
イエス・マリアを中心にして使徒や聖人たちが周りを囲んで描かれている。ここまで描き込む必要があるのかと思うほど、ごちゃごちゃと描き込んである。イエスとマリアが逆光で、その他の人物も暗い感じで、おどろおどろしささえ感じる。日本人が考えるお明るい花畑の中にお釈迦様がいるような「極楽」のイメージとはずいぶん違う。
これは横5mくらいの習作(ティッセン=ボルネミッサ美術館)だが、色遣いや細部がミケランジェロの「最後の審判」に似ている。こんな感じだったのだろうか。
マリアとイエス。イエスの方が上位に描かれる。二人ともかなり厚手の外套を重そうにかけている。この「天国」は寒いのか。
二人の足元。天使たち? ケルビム? セラフィム? 無造作に積み重ねられ、これではまるで地獄のようだ。ダンテの「神曲」地獄編の船で渡るシーンで、水中に蠢く地獄の亡者どもがこんな感じか。白目を剥いたりして全く可愛くない。
向かって左側に飛んでいるのは、百合の花を持つ天使ガブリエル。「受胎告知」を同時に描き込んでいる。
右側に飛んでいるのが、正義の天秤を持つ大天使ミカエル。カラス天狗のような黒い羽根であり、周りの天使たちは相変わらず地獄の亡者っぽい。
左側にいるこの爺さんは何という聖人なのだろうか。両手に幼児を掴み、右手にはナイフを持って首を切ってないか。
右側にいるこの爺さんは、本を持っているから恐らくモーゼ。足元に幼児を捕まえており、その他身体に人間を巻き付かせていて、腰の剣が左手下の人間を串刺しにしているのではないか。
これは右下、中央寄りの部分。何と言う聖人か分からない。子供を抱きかかえている。子供は顔色が悪く、まるで死体のようだ。
地球儀を持ち上げているのは、裁判官キリスト(Wikipedia)らしい。黒人奴隷のようだ。地球は十字架を持って縛られている。その中にいるのは逆さになった裸の人間。それと、左の方で光っているのは蛇か?
地球上にいた猿人に蛇の遺伝子を混ぜ合わせた所を描いているのか。そんな人間の創生も宗教で縛って誘導している。
イエスとマリアの足元で踏みつけにされている幼児たち。ここを大きく見れば、上から降りて喰た巨大な爬虫類の頭になっている。幼児たちはこいつの食い物である。
中央下段には使徒たちが描かれているらしいが、大きく見ると、巨大な爬虫類が大口を開けて人間を呑み込む場面が隠し込まれている。
全体図。左右の群像も、目を広げて、大きく捉えればこんな隠し絵が見えて来る。人間を口に入れる巨大な爬虫類である。言い替えれば人間を食い物としている巨大な有機生命体。人はそれを「神」と呼ばされている。
この姿が「天の父なる神」である。
ヴェニスのドゥカーレ宮殿を観光する人たちは、「神」に睨まれながら、自身が家畜である事も知らずに観ている。ただボーっと、あるいは感動を装いながら・・・・。これらの絵は家畜監視の為の象徴となっている。