巨大な蛇が背後に迫っている。バレエダンサーが今にも呑まれそうである。
エドガー・ドガ 「舞台上の二人の踊り子」 1874年 コートールド・ギャラリー(ロンドン)
真ん中の踊り子を狙う褐色の巨大蛇の姿が捉え易いと思う。頭部の幅が2メートルほどもありそうな蛇である。
イラスト化すると上図右のようになる。僕にはこう見える。
真ん中のダンサーの下半身は既にこの褐色の巨大蛇の口の中にあるようだ。ちょうどその下に上半身を別の蛇に呑まれた別のダンサーが繋がるように位置している。
向かって右のダンサーも同様で、上半身・下半身が別の蛇に咥えられてそれらしく見せている。つまりこの二人の踊り子は胴で切断されている。右の娘の腹の辺りに血が噴き出しているのが見えるだろう。
もう一つ別の作品。
「緑の中の踊り子」 1883年 メトロポリタン美術館(アメリカ)
このポーズの踊り子はドガがたびたび描いている。この踊り子も同様に巨大蛇に呑まれている。しかも上半身・下半身別々に咥えられている。ドガの描く絵は常に残酷でおぞましい。
ドガの踊り子は美しいと言う人がいるようだがどうだろう。ルノワールの描く美少女と比較すると一目瞭然、美しくはない。それにこの絵に関しては、手が異様に長く細く、気味が悪いほどである。頭の後ろに跳ね上がっているのは左足? それにしては形がおかしい。先端がちょん切られたダイコンのようだ。胴あたりの表現も、スカートの中に上半身がめり込んでいて、ちょっと違うのではないかと思う。
右手の先。作者にデッサン力が無いわけではないだろうが、おかしな指である。まるで喰い千切られて白い骨が一部露出してしまっているように見える。
左手の先には何か不明確なものが見える。僕にはそれが、生贄とされた小さな人間に見える。それを背後の巨大蛇が口に入れている。すなわち踊り子は巨人であり、小さな人間を蛇神に捧げている最中である。
画面上方には別の蛇たちも生贄を喰いに集まって来ている。
全体図で見るとこうなる。
踊り子は二匹の大蛇に呑まれている。上半身を見せている踊り子の下半身は右肩後ろにいる大蛇に呑まれている。その際、左足も同時に咥えられている。足首から先は既に無い。右足は踊り子の身体に巻き付いている大蛇によって咥えられている。つまり衣装のスカート部分は大蛇2匹で形作られている。
スカート部分が一匹の大蛇の頭で踊り子の下半身を呑み込んでいると見る事も出来るが、そうすると下に出た右足の説明が出来ない。
どちらにしろ踊り子自身も巨大蛇に襲われ喰われている。胴で切られ、手先・足先で切られ、少しづつ解体されつつある。
画面向かって右側にある白い影は別の踊り子のスカートではない。白い大蛇が人間を口に咥えている姿が描かれているのだ。
彼らも有機生命体である以上、有機物を摂取しなければその肉体を保てない。家畜を育て繁殖させ、解体してその生命に感謝しながら食べるのは至極当然の事で、はるか昔から続いている慣習なのだ。
知らないのはその家畜たちだけ。無知のまま育てられる。繁殖の為の性行為の事ばかり考えて一生を終える。家畜にとって他の有機物をよく食べ、子孫を増やす事が一番の目的なのである。蛇神たちのやっている事を人間もやっている。非難できる事ではないかもしれない。