この絵にも犬が出て来る。だがそれが何のために描かれているのかが分からない。
エドゥアール・マネ 「バルコニー」 1868~69年 オルセー美術館(パリ)
バルコニーに出た三人の紳士・婦人。奥の暗い所には給仕のような少年もいる。バルコニーに椅子を持ち出して座る婦人も他の人たちも目線がバラバラで統一感が無い。左下に日本風の植木鉢と牡丹のような花が置かれている。この絵は何なんだろうか。肖像画にしては三人の関係が悪そうでおかしく見える。右の婦人も室内で傘を抱えているのもおかしい。作者が何を描こうとしているのかが全く分からない。
座る婦人の足元にいる犬。ひどく稚拙な絵である。最初見た時は「落ち武者」の絵かと思った。犬として見てもどれが前脚と見たら良いのか。
頭にリボンを付けた「ヨークシャーテリア」であるらしい(上写真右)。それにしてももう少し犬らしく描けなかったのか。それとも犬を変形させて絵全体の為に何らかの役目を担わせているのか。
向かって右の婦人の顔。小さい口の左右に赤い汚れが付いている。頬も少し膨らんでいる。
その手は何かおかしい。特に左手の指は何本あるのか。色も途中から変わっているので、この左手の先は指ではなく、小さな人かもしれない。左手で小さな人間を捕まえているのかもしれない。
上図左は暗闇の中の少年。明るくしてみるとこうなる。頬を膨らませて何かを喰っているらしい。顔の前の大きな食器のようなタニシのような物は何か分からない。
上図右は画面中央の紳士の顔。鼻の下の髭がおかしい。何か赤っぽいものを口に咥えているのか。
左側の婦人(モデルはベルト・モリゾであろう)。目を大きく見開いて驚いた様な表情である。顎の下が赤黒く汚れている。「オランピア」の時の婦人の首のように首飾りの所で首が切れているのではないかと思える。
犬をイラスト化してみるとこんな風になるのではないか。犬の頭部と見える部分は小さな人間の後ろ姿であり、尻をこちらに向けている。子供を出産していて(犬の鼻と口の白黒の部分が頭から生まれ出て来ている人間に見える)、出て来た子供を上から来た蛇が口に入れて喰っている図と見える。
婦人二人の両手は胴体と繋がっているとは見えない。その下半身は異様に長い。実際には彼女たちの下半身は無く、別の人間の身体がそこに置いてある形になっていると思う。バルコニーの灰色の地面には人間が横たわっているのか。犬のそばのボールは恐らく人間の足か手の切断面を見せる為に使われたと思える。
画面上部の暗闇には何やら怪しげな魑魅魍魎が降りて来ているらしい。蛇の頭の形を捉える事も出来そうである。はっきりとしないが少年の顔の前にあるのは人間の肉塊(切られた足)であるかもしれないと想像している。
この絵の隠し絵はよく見えない。この絵を調べる事にして少し後悔している。
いつもなら全体図に巨大蛇がうっすらと見えるとかして細かく見て行くのだが、今回は犬の描写が変だからそこから調べ始めてみた。
この絵の中の犬の役割は、画面下方の生贄の人間たちの一部であると共に、画面下方に頭を見せる巨大蛇の目を形作る部分となっている事であるらしい。
画面下部に喰われる人間の姿が見えて来そうで見えて来ない。