名画の中の人喰い蛇

美術館にある名画には蛇の隠し絵がある。その蛇は人間を喰っている。

ゴーギャン 「夜(悪夢)」 死の恐怖

ゴーギャンの作品には時に生と死をテーマにした物がある。この絵もそうだ。

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ポール・ゴーギャン 「夜(悪夢)」 1899~90年 ポール・ゲティ美術館

モノタイプと言う一種の版画の技法で描かれている。ダヴィンチの「荒野の聖ヒエロニムス」や「東方三博士の礼拝」によく似た赤褐色一色で描かれた作品である。

Google Arts&Cultureの説明によると、画面に大きく描かれているのは聖書のイヴで、右側に倒れたアダム・その手前に悪魔としての蛇がいると言う事である。イヴの背後には馬に乗ったフード付きの服を着た人物が描かれている。ゴーギャンは他の作品「死霊は見ている」でフード付きの服を着た人物を死霊として描いていてそれによく似ている。

死霊がアダムを馬で踏みつけ、イヴはそれに背を向け頬に手を当て股間を布で押さえている。イヴは蛇にそそのかされてアダム以外の男と不貞か何か悪い事をしてアダムを殺そうとしているのだろうか。

最初この絵を観た時イヴの背後に熊の化け物がいるのかと思ったが違うようだ。

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イヴは鑑賞者の方を見ている。無表情である。

頬に当てた左手の小指あたりの表現がおかしい。手に何か持っているようだ。口の周りも白っぽくなっていて不明確な表現になっている。頬が少し膨らんでいて口に何か含んでいるようだ。

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イヴの顔をトレースしながら詳細に見て行く過程でこんなイラストが描けた。やはり手に小さな人間を持っていてそれを口に入れているようだ。顔や体、髪の毛に人間の形が隠れており、この巨人が人間を常食している事をうかがわせる。所々に大小の蛇がおり、それが人間に噛み付く様子が隠されていた。

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股間を隠す白い布(葉っぱにも見えるが)は彼女の羞恥心を表すのではなく、手で掴まれた小さな人間のあわれな姿を表している。

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イラストにするとこうなる。三人くらいの人間が掴まれている。捕まりながら人間たちは尻から子供を産んでいたりする。

右手の形が少し変だが、ここでは腕の蛇が手先の人間に喰い付く様子が表現されている。

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背後の騎馬の死霊の顔は全く下手くそな絵であり、馬の顔もどこかおかしい。作者のデッサン力が無いのではなく、別の意図があって絵がゆがめられているのだろう。

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イヴとその背後辺りをイラスト化してみた。こんな風に人間の身体が散りばめられていた。所々で蛇が人間を襲っている。騎馬の死霊もアダムの身体も全て別の人間の身体の積み重ねである事が分かる。イヴの身体も同様に小さな人間の身体を組み立てて出来上がっている。何処もかしこも大小さまざまな人間を積み上げた形になっている。大蛇がそれに喰い付いている。

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全体図で見ると、積み上げられた人間たちの後ろの白い部分にうっすらと巨大な蛇の顔が見え、この人間の山を口に入れようとしているのが分かる。ここは神への生贄の現場である。山のように積み上げられた人間たちの中には手足がバラバラになって地面に落ちていたり(アダムとして表現された人間の部分)、腐って背骨やあばら骨を見せてうつぶせている者もいる(右下の蛇の後ろ)。骸骨になった者もいる(蛇の手前)。

イヴとして大きく描かれたこの人物は恐らく巨大蛇神を手助けし、人間たちをこの場所にうずたかく積み上げた人物だろう。自身も人間をおこぼれで喰っている。

原題は「EVE(The Naightmare)」(悪夢)とあるが本当に「夢」だろうか。現実に今もどこかでこんな血塗られた光景があるのではないか。

イヴも蛇神の手助けをしながら、いずれ自分も背後の人間たち同様喰われる運命にあると恐怖の心を持っているに違いない。肉体はいずれ滅びるのだがこんなにも残酷で悲惨な死は怖い。どんな死に方をするにせよ死と言う未知の領域に入る事自体が怖い。そんな恐怖心を思い起こさせる絵である。

ただ、喰われる人間たちは死の直前に子供を産む様子が描き込まれているのは唯一の救いである。遺伝子は次の世代に引き継がれる。