名画の中の人喰い蛇

美術館にある名画には蛇の隠し絵がある。その蛇は人間を喰っている。

ベルテレミー 「プロメテウスの創造物」 愛と懊悩の火

 

プロメテウスの考察をしながら参考になる絵を探していたらGoogle Arts &Cultureにこんな絵を見つけた。

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ジャン=シモン・ベルテレミー 「プロメテウスの創造物」 1802年&1826年 ルーブル美術館天井画の一部分

今まで全く知らない画家だったが、人物表現がなかなか巧みな作品を残している。ルーブル宮殿等の天井にフレスコで描いてあると言う。

前回は、プロメテウスはそれまで単為生殖だった人間に女性を与え、無限の可能性をもたらす有性生殖を与えたらしいと言う結論に達した。神話で伝わっているように単に人間に「火」そのものを与えたと言うよりも、男女の愛を与えた事が誤訳されて伝わっているのではないか。古代のギリシャ語から日本語まで何回も翻訳されている内に違ってきてしまった事はあり得る。今回はその確認である。

下部の皿の上に座っているのが人間(男)だろう。雲の上にいる髭の男がプロメテウス、その右に勝利の女神アテナ(兜を被り、手に盾と槍を持っているし、勝利者の冠用のオリーブを持っている)で間違いないと思う。プロメテウスは火のついた松明を人間に向かって差し出している。何故か火は物理法則に逆らって下に向かっている。

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プロメテウスの身体も衣も小さな人間の集まりで描かれている。画像が鮮明では無く不確かだが、口に人間を咥えているらしい。人間を食糧とし、予備の食糧を身体に纏わせた、蛇神に近い存在としてこの巨人族(タイタン)が表現されている。火の表現はどう見ても人間の身体である。ただ頭を松明の筒に突っ込んでいるのか、尻を突っ込んでいるのかがよく分からない。

背中になびく赤い衣の中では人間がセックスをしているようである。

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皿の上に座った男は火に照らされて上の方から赤みが差し、まるで泥人形に命が吹き込まれるかのように描かれている。それまで何の意識も無く本能だけで生きていた人間が知恵・愛を持ち始めた瞬間であるに違いない。キリスト教で言う蛇に知恵の実を与えられた瞬間だろう。

松明の周りの雲の中にはどうやら男女の交接による出産の光景が描かれているようである。

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火の部分が拡大しても今一つよく分からない。尻を下に向けて男の頭の上に乗せ、この男を産んでいるように見せたいのだろうか。

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画面右下(と言っても天井画である以上全体画面に隅は無いが)、プロメテウスとアテナの目線の先にこんな物が描かれている。戦争の後の混乱した光景だろうか。知恵の無い人間がもたらした無秩序に散乱した物が山積みになっているのだろうか。「火」と言う物を武器にして戦争が起こり、こんな光景が未来に現出すると言っているのだろうか。服の脱げた人間の尻が見える。死神の持つような草刈り鎌も見える。

細かい所を丹念に見ると、出産している人間が多く見て採れる(僕にはこんな風に見えた)。

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その手前にある物は何だろう? 男が盾の上に座っているとすればこれは鎧兜・すね当て等の武具かもしれない。服を上に被せてある。

しかしよく見るとこれも人間の身体で出来ている。神に捧げる生贄の人間がここに積まれている。その人間たちは交尾し、出産している(おそらく長い寿命の蛇神にとって人間の誕生・交尾・出産・死など一瞬の出来事に見えるのだろう)。

後ろのもやもやとした部分には人体が見て採れるが、その尻からは生まれる子供が出て来ている。

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アテナは人間を食糧とするから身体に人間を纏わり付けている。兜も胸当ても小さな人間である。盾の裏側にも人間を隠し、手に持つオリーブの葉も全て小さな人間である。

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なんてやる気の無い表情なのだろうか。プロメテウスが人間にそれを与えている事に賛同していないに違いない。家畜としての人間は無知のままにしておいたほうが良いのだ、それを下手に与えてしまえばいつか破綻する時が来る、とでも考えているのだろうか。

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元絵、少し明るくした。

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全体のイラスト。蛇による食人・人間の性交・出産が見られるが、この作者のこの絵には出産の光景が目立つ。

もちろん僕にはこう見えると言うだけの事で、全くこうは見えないとと言う人もいるだろう。人間の目に映った物は脳を一度経由するから、見えないと思っている人には全く見えないはずである。この画像は人の想像した神話上の神を画家がまた想像しながら描いた物でそれ以外の物では無いと思い込んでいる人もいるだろう。バカげた事を言うなと叱るかもしれない。しかし僕は自分の眼を信じる。他所から教えられた通りではなく、自分の眼に見える所を伝えたい。たとえこんな「人間は蛇の食糧だ」と言うようなとんでもない結論が浮かび上がって来ても・・・・。

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頭の中に蛇を思い描いてこの絵を見るとこう見える。蛇の頭が見えたらあるべき位置に必ず両目が見えて来る。蛇の口先には必ず人間の姿がある。下の男だけでなく上空の二人の神にさえ喰い付く蛇が描かれている。

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下の男の頭の後ろに尻を向けた女がいる。まるで男を産んでいるかのような格好である。男の背後に出産する女が大小二人重ねて描かれている。右下にはやはり出産する女が横たわっていたり、腹這いになっていたり、しゃがみこんだりしている。そして全ての人物を呑み込むかのように巨大な蛇の顔が画面いっぱいに描かれている(イラストでは青く輪郭と眼を示した)。

ギリシャ神話を題材にしたこの絵は、キリスト教の原罪(イヴが蛇にもらった知恵の実をアダムに与えた)と同じテーマではないか。キリスト教ではアダムからイヴが創られた後、楽園にいた時蛇にそそのかされたように言われているが、この絵を見る限り、最初の男が創られ(男の座る皿は遺伝子を混ぜ合わされる為の容器にも見える)、初めて女を与えられ、その愛に胸を熱くしまた同時に女の複雑さに混乱し悩み始める瞬間を描いてあるように思える。時間的なずれは無く、全て同時である。

プロメテウスの火」は男女間の熱い情熱であるらしいとここでも思った。