名画の中の人喰い蛇

美術品が教えてくれる命の意味を農作業しながら考える。

雪舟 「天橋立図」 人間の身体は蛇神に喰われて自然に還るのか

セザンヌルノワールの汚い絵を見て来たので、気分を変えて今回は日本の水墨画の一大巨匠雪舟の作品を見る事にする。国宝である。

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雪舟 「天橋立図」 室町時代(1501~06年) 約90cm×170cm 京都国立博物館

黒すぎて見難いので明るくした。

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京都北岸にある天橋立を東側から俯瞰した図だそうだ。ヘリで空撮したような感じになっている。近景の陸地、中景の天の橋立、遠景の寺や山並みが克明に描き込んであり見る者を雄大な気分にさせる。寺の名前も書き込んであるから一種の観光案内をも兼ねているのかもしれない。中国に渡って絵を学び、最晩年にこの名所に実際に行って描いたとされる。80歳を過ぎてから旅行しこんな詳細な図絵を描くとは、雪舟とはただ物ではない。

このブログでは名画の中に「人食い蛇」や「生贄の人間」が隠されている事を暴いているのだが、この絵では比較的簡単に見つかった。中景、天橋立の向かって左側陸地(島?)に山に似せた大きな人体が見えたのである。

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天の橋立の突端の向かい側(画面で言うと中景左側)。イラストにすると上図右のように見えた。裸の人体の山である。大きいのも小さいのもある。

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また同じ部分をこう見る事もできる(上図右イラスト)。数体の人体が大蛇に絡まれている。細かく見ても大雑把に見ても正確な人体を捉えることが出来た。こう言う表現は人間の手に持つ筆先から生まれようがない。雪舟がいくら天才だからと言って絵の中に二重三重の意味を同時に描き込むなど出来る訳がない。

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画面最下端の近景の中にも人体が発見できた。横たわった女が数人いる。身体に蛇が纏わり付いているがその蛇は同時に他の人間の身体にも見える。この陸地も生贄の人間が置かれた場所である。

上の方から大蛇が喰いに来ているのが薄く見えている。この大蛇の輪郭は絵を描いた紙の張り合わせ部分のように見せているがそれは見せかけである。意図的に明暗を付けている。

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 画面右上の遠景。鳥居のある建物の周りも人間の遺体だらけである。考えられないほど大きい人間があるいはうつ伏せに、あるいは仰向けになって折り重なるように山積みになっている。鳥居のある建物は寺院なのか神社なのか分からないが、ここだけに赤い色が使ってある。生贄の人間の頭から出た血だろう。

山の表現は、人体にも見えるし大蛇にも見える。どちらでも捉えられるような形になっている。一応イラストではどちらかと言えば人間ととらえた物を黄色系統の色で、大蛇ととらえた物を青系統の色で分けてみた。しかしやはりそのどちらとも採れる。

自然界は有機的存在に満ちていて、人間の身体も死後有機物に分解され、土に還り再び自然界に戻る事を考えればこの表現もあながち嘘では無い。山のような大きな物まで人間の身体で表現するのも象徴的表現法としては有り得る。

人間の身体は魂の入れ物であって所詮自然界からの借り物である。その入れ物はいずれ自然に返さなければならない。魂だけが己れ自身の物で別次元に旅立たなければならない。蛇神に喰われようとも魂は売り渡さない。この世の地位・名誉・財産をいくら与えられても名画の天才画家たちのようになってはならない。

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画面右端中ほどに不思議な表現がある。上図右イラストのような(オレンジ色部分)画像が目に入ったのである。まるで写真のような陰影の子供の顔である。仰向けになったのを頭の方から描いてある。確か「地獄草紙」の火炎地獄の中にも信じられないリアルな表現があったと思う。見間違いだろうか。

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画面上方の遠景、左側。大きな人間・小さな人間が山積みである。山の膨らみは人間の肩であったり頭であったりする。人間の身体であると共に大蛇である所もたくさんある。背後から迫る大蛇と共に空から無数の巨大蛇が垂れ下がって来ている。

左端にまた子供のリアルな顔が見つかった(イラストでオレンジ色部分)。山のように大きな子供の顔である。何だろう? 雪舟のお遊びか。

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全体をイラストで表した。蛇に喰われる人間の生贄現場の絵である。

天の橋立の根元にある「鳥居」は、生贄現場の道標であるらしい。上空にいる蛇神はこの「鳥居」を目印にして降りて来て人間を喰うらしい。

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画質変更した画面を遠目にしてまたは細目にして見るとこんな蛇神が見えて来る。まず遠景の人間を喰う蛇神、中景の天の橋立上の人間を喰う蛇神、近景の人間を喰う蛇神がいる。皆上空から一直線に真下に垂れ下がってくる。その上に右の山並みの背後から迫る蛇神たち、近景の人間の真上に長々と横たわる蛇神、そして最後にそれら全てを呑み込む画面いっぱいに描かれた蛇神。大きい者が小さい者を喰い、強い者が弱い者を喰う。蛇神同士であってもこの原則は壊れない。これが自然の摂理と言う物か。