帝国美術院院長・東京芸術大学教授等を務めて明治大正の日本美術界を引っ張って来た人の代表作である。
この作品にも蛇神への信仰・食人の示唆が見られた。
眼の中に小さな蛇がいる。瞳の周りに蛇が円を描くように輪を作っている。レンブラント等の西洋画家の絵と同様である。白目も白い蛇の顔である。上下のまぶたも横になった蛇で表されている。右目の眼頭から小蛇が飛び出している。左目の下まぶたには2匹ほどの白蛇の顔が並んでいる。左右ともまつ毛の表現は先の尖った蛇の顔の様だ。
顔の皮膚にも蛇の形が見て取れる。全ての部分が蛇で表現されている。
鼻も口も蛇で出来ている。口は真っ赤でその中から何かが出て来ているように見える。ほんの少し開いた口の隙間から小蛇の頭、口の両端から半透明の蛇が這い出して来ている様に見える。
耳も蛇が形作っている。髪も同様である。
指が三本のレプティリアンである。親指は輪郭線ではっきり区分けされた別の蛇だし、小指は全く描かれてない。膝の陰に小指が埋もれて隠れているとするには不自然な表現である。こういう風なはっきりした三本指を二十年後の岸田劉生が麗子像で描いている(既出「麗子像」)。岸田劉生は黒田清輝の弟子である。
左手は何本指か分からないが、その表現が右手とは全く別である。親指が短く、手全体がゴツゴツしる。手全体が横を向いた蛇にも見える。親指と人差し指の裂け目がその口の裂け目である。また指の一本一本も蛇の顔になっていて、親指の付け根に顔を置き、手の甲を這っているらしい蛇もうっすらと見える。
手の下端部分、岩の上の赤っぽい陰が血にも見える。
全体を見ると、画面全てが蛇で描かれているのが分かる。遠景の空の中・山々・湖の中、全ての場所に大きな蛇がいてこの人物に向かって来ている。背後の岩は明らかに口を女の背中に当てている。着物にも無数の蛇が張り付いている。女の輪郭に接している山・湖・岩は女に口を向けている。左手の所では湖の中の大蛇が女の手に噛み付いている。着物の蛇も女の手や顔を噛んでいる。
画面上の全てを蛇で持って表現するというのは、蛇型宇宙人の手法で人間のなす表現ではない。
また絵画の中の人物がレプティリアンであるのも彼ら独特の表現である。このレプティリアンが大蛇に食べられている所を描いて人間食を示唆する。