絵画における子供の表現をレンブラントの作品で見てみた。
レンブラントガニメデス1 posted by (C)カール茅ヶ崎
レンブラント・ファン・レイン 「ガニュメデスの誘拐」1635年 ドレスデン美術館(ドイツ)
ギリシャ神話の中で、ゼウスに気に入られ給仕にさせられる美少年ガニュメデス。ゼウスは鷲に変身し彼を誘拐したという。その場面を描いてあるようであるが真のテーマは違う。
レンブラントガニメデス2 posted by (C)カール茅ヶ崎
暗い部分を明るくして精査すると巨大な爬虫類が何体も現れる。鷲の絵の部分だけを見ても巨大な蛇どもが右から左から、上からも人間の幼児に集まって喰らい付いている。その蛇どもが集まって鷲の形に見える様になっている。背後の空にもより大きな蛇の顔が隙間なく並んでこちらを見ている。
レンブラントガニメデス3 posted by (C)カール茅ヶ崎
この幼児のどこが美少年なんだろうか。醜くゆがめた表情、半ば白目を剥いたような眼、だらしなく開けてよだれを垂らしているらしい口。ゼウスの気に入った美少年とは思えない。神話とは全く別の話を作者は描いている。
レンブラントガニメデス4 posted by (C)カール茅ヶ崎
小便まで垂れ流しているのが見えるが、気になるのがこの子供の身体のバランスの悪さである。短足・胴長なのはまだ良いとしても、両腕の形がどうもしっくり来ない。両腕ともに少し長すぎるし、変な方向に捻じれている感じがする。
レンブラントガニメデス5 posted by (C)カール茅ヶ崎
上図左では元の絵に修正を加えた。子供の輪郭の外にある衣を消してみた。
上図右で、子供の両腕部分を右斜め下に少しずらしてみた(白破線の位置から白実線の位置に)。こうしてから子供の身体全体を白い線で囲むと少し人間らしく見えると思う。
レンブラントガニメデス6 posted by (C)カール茅ヶ崎
左腕部分を拡大して画質調整、下にイラスト化した物。
鷲の脚先の表現が良く分からない。鳥の三本指に捕まれているようでもあるが、腕周りの黒い部分は何だろう。肩口と肘の辺りには白い衣服が残っているが途中で分断されている。肩が異様に赤い。
大蛇に噛まれて肩の所で切断されているのではないか。上腕の黒い部分の幅だけ本来の位置からずれているのではないか。
レンブラントガニメデス7 posted by (C)カール茅ヶ崎
右腕を見ると鷲の身体を形作っている大蛇たちが並んでその腕に喰い付いているのが見える(上図下のイラスト)。鷲の嘴は布だけを咥えていて、その布で子供の上体を包んで支え持っている。
こちらの腕も切断されて鷲の嘴の裏に存在しているらしい。変な風に捻じれている。
レンブラントのサインと年号が描かれている部分の表現が微妙である。上から降りてきた白蛇と右に這う白蛇で、風になびく布のように見えるが、どうやらここは右腕の切断面であるらしい。つまり腕が噛み千切られて左上に飛び、その際すこし回転もしている。だから不自然な絵になっているのである。
この子は両腕を噛み切られた痛みに顔をゆがめ、口から血を吐き出しているのである。
やはりこの絵でも子供の腕が切断されていた。こういう表現を採る事が決まりであるかのように・・・・。
人間が若鶏・ラム肉等家畜の若いのを好んで食するのと同じように、蛇神は若い人間を好んで食すようである。