名画の中の人喰い蛇

美術館にある名画には蛇の隠し絵がある。その蛇は人間を喰っている。

ダヴィンチ 「ブノアの聖母」 幼児を喰う聖母

世の中、少し見ただけでは誤解をしかねない所が随所にある。フェルメールの絵の室内の空気感に魅了されたり、モネの絵の光の移ろい表現に感心したり、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵の女性の肌の質感に人間が絵筆で描いたとは思えないほどの天才性を見出したりするが、それら見る人を惹き引き付ける表現は人を惹き付ける為だけの物であって、より深く見ると別の物が見えて来る。

この絵などは若い聖母の滑らかな肌と輝くような笑顔、その膝の上でころころと健康的に太った幼子イエスが花を与えられて遊んでいる様子が微笑ましい・・・・と、一般の人々は思うだろう。実際に時間を掛けて見続けていると別の物(隠し絵)が見えて来る。

レオナルド・ダ・ヴィンチ 「ブノアの聖母」1478年 エルミタージュ美術館(サンクトペテルブルグ)

上左が Google Arts & Cultureからの物、上右がWikipediaからの物。どちらも明るくし、コントラストを少し強調した。色合いが若干違う。

不思議な構図である。前回見た「カーネーションの聖母」とは左右逆になっている。聖母の右足がこちら側に長く見えている。まるでジーンズを履いている様であり、腰に金色のペチコートのしわ(降誕の象徴)を見せている。イエスの尻の下にあるのはクッションのような物か。左足はどこか分からない。イエスは豚の子のように良く太り、素っ裸である。イエスの腹に透明な布を巻き付け、それを左手でまとめてイエスの身体を支えるようにして持っている。聖母の右手に小さな白い花があり、それをイエスに見せているようだ。

聖母の下半身の表現が謎である。スカートらしくない。下着が腰の上に出ている。長椅子に座っているのか、テーブルの上に尻を乗せているのか。イエスの下のクッションの丸みは二つほどあるが、どちらかが聖母の左足の膝なのか。またイエスの下半身のデッサンが狂っていて、尻の形がおかしいし、上半身とうまく繋がってない。レオナルドがこんな不格好な尻の形を描くのはおかしい。

高画質な元絵が手に入らなかったので詳細が分からない。全体図を部分的に拡大してみたらこんな風に見えた。聖母の口から何かが下に垂れている。口の中に見えているのは歯では無いようだ。歯にしては変に赤いし、一本一本分かれてない。何だかよく分からないが半透明の何かがぶら下がっている。頬も膨らんでいるから何かを喰っているのではないか。口角が上がって遠目には笑っているように見えるが、口の両端に血が付いていてそう見えているのではないのか。

左肩に掛けた上着が人の手のようだ。

幼児の顔は無表情である。身体が裕福な家の子のように良く太っている。人間の罪を一身に背負って死んで行く救世主の表現としてはこれで良いのか。無理やり太らされた家畜の豚のようである。右手の先の色が悪い。青黒く変色している。この両手・首は切断されているのかもしれない。

幼児は口から血を出しているのか。首は切断された物がそれらしく置かれているだけか。あるいは首に赤い蛇が巻き付いているのかもしれない。

右肩の付け根には切断線が見える。花の葉の線と並んでいるので見つけにくい。

幼児の背中に置かれた聖母の左手。ヴェールのような透明な布を握って幼児の身体を支えているようにも見える。また右手に持った花の予備をまとめて持っているようにも見える。緑色の葉が束ねられている。

ラファエロ・サンティ 「カーネーションの聖母」 1506~07年頃 ナショナルギャラリー・ロンドン

後にラファエロが模写するようにして同様な画題の絵を描いている。ここでは聖母は左手に別の花を持っている。

ダヴィンチ 「聖アンナと聖母子」 1510年頃 ルーブル美術館

しかし「ブノアの聖母」の左手の形はどこかで見た事があった。この絵のイエスの左手と同じ形なのである。ここではイエスは生贄の子羊の耳を掴んで捕まえているように見えるが、よく見ると実際にはイエスは手に短刀を持っていて羊の頭に突き刺しているのである。

だから「ブノアの聖母」でも、生贄の幼児の背中に聖母が短刀を突き立てていると言うのが本当だろう。聖母が生贄の人間の幼児を切り刻んで喰うのだと作者は暗示している。

全体図をイラスト化してみた。前回「カーネーションの聖母」と同じように聖母は二匹の大蛇が絡み合って形作っているようだ。そいつらが空から降りて来て人間の幼児を切り刻みながら喰う図である。聖母の下半身はどうやら子作りをしている人間が隠れているらしい。

こんな風にも見えた。上から降りて来た巨大な蛇が大口を開けて幼児やその他の人間を喰っている。目を細めて元絵を見ると、見える人には見えると思う。

小さくしたり、色を無くしたり、ぼかしたりするとこんなイラストが描けた。

またこんな人喰いの化け物の絵にも見えた(少しやりすぎかもしれないが)。長い黒髪の、目の白い化け物である。幽霊や妖怪伝説は、暗がりで見たこんな物が始まりなのかもしれない。

 

人々を惹きつける魅惑的な聖母子像。若くて健康的な母子につい人は見入ってしまうが、そこが狙い目であり、惹きつけられた人はいつの間にか神への生贄礼賛信者になってしまっている。何も考えずに神の身体の栄養物になる事に至福の喜びを感じるようになる。よくよく目を見開いて、時間をじっくりと描けてその物を良く見る事が肝要である。パッと見や感じでその人・物を判断してはいけない。