この絵には蛇神のリアルな姿がはっきりと見えていると思うのだがどうか。
パオロ・ヴェロネーゼ 「キリストの昇天」 1585年 カピトリーニ美術館(ローマ)
イエスが磔刑の後、死んで復活し天に昇る姿が描かれている。その場にいた人々の驚き慌てる様子が画面下の方にある。イエスの足下の天使は人々に向かって手を挙げ、驚かないように諭しているのだろうか。
イエスが天に昇るその天空の窓を、逆に凸部としてみるとそこに巨大な蛇の顔が見えて来る。
ざっと荒々とイラスト化してみた。イエスの背後の黄色い窓部分がリアルな蛇の顔になっている。蛇の口先には天使にも見える人間たちが数人咥えられている。
画面下半分に別の蛇がいて、やはり人間を咥えているらしいがこれは良くは見えて来ない。
イエス・キリストの背後の天空に幼児の頭が無数に並んでいる。頭に翼を付けたこれは「ケルビム」とか言う天使の一種らしい。ラファエロの絵などにも描かれていたがここでもあまりに無表情で気味が悪い。
「ケルビム」たちは恨めしそうにイエスの方を見る。この子たちは生贄にされて喰われ、神の体内に取り込まれた事をほのめかしてこんな風に描かれるのだろう。
イエスの後ろにいるのはイエスの父なる神、地上のすべての生物を支配する神である。人間の幼児も限りなく食べて来たので、顔の鱗の一枚一枚にその子たちの顔が浮かび出ている。向かって右側に、樹の枝に擬した目がある。瞳は縦線の蛇の目である。ここまで写実的な蛇神の姿は珍しい。
ここでも蛇神の協力者であるイエスは蛇神の目と目の間に位置している。蛇神の脳内の思想(企み)を人間に伝える役目をイエスが担っていると言う事だろう。
天使から下の人物描写がよく分からない。人間を襲う巨大蛇が隠し絵で表現されているらしいのだが、どうもはっきりとはつかめない。
全体図で見る。イエスの後ろの蛇神が一匹、立ち上がって人間たちを巻き付けているようにも見えるし、黄色蛇と青蛇が絡みついて巻き合いをしている交尾図が隠れているのかもしれない。その辺は今後何年かして見直した時にまた考えようと思う。
白黒にしてぼかしてみた。
やはり色が付いていた方が蛇の顔がよく見える。最上段の左右の隅の半円形が目と見るとまた別の蛇の顔が見えて来る。
どうも一度それに見えてしまうと中々逃れられず、別の見方がしづらくなってくる。目を細めたり、焦点をぼかしたりしてもそれ以外の物が見えて来ない。逆に言えばイエスの後ろの蛇の顔があまりにリアルすぎるのだ。正面を向いたこいつの目で見つめられて何か「蛇に睨まれたカエル」のような感じになって逃れられない。