蛇の要素がやたら多い絵を見つけた。
ダンテ・ゲイブリアル・ロセッティ 「小枝」 1865年 ハーバード美術館(アメリカ)
ロセッティはイギリスの詩人であり、画家であった。彼はこんな物思いにふけるような女性を描いた。裕福そうな女性がテーブルを前に木の枝を手にして視線をあらぬ方向に向けている。画面が暗くてよく見えないが右手に小枝を持っている。画面最下端はあるいは窓枠で、外を眺めているのかもしれない。手前に置かれているのはどんぐりの付いた小枝と化粧瓶か。
髪を束ねた布が肩にもかかっているが、これは一目で蛇だと思った。髪に絡みつき肩に頭を乗せた蛇。脱皮した抜け殻にも見える。いやその口先に小さな人間を咥えているのが見て採れるので抜け殻ではなく生きた蛇である。
こう言う気持ちの悪い物をそれとなくよく描けるものだ。
僕も蛇が嫌いで、畑で見かけるとすぐさま追いかけて殺す。その時手にしていた刈払機でも鍬でもありあわせの物で切って殺す。死んだ蛇さえも気持ち悪いのでどこか見えない所に捨てる。多分人間は前世で蛇に虐げられた記憶があるのだろう。
女の口の表現がおかしい。上唇がプリングルスのおやじの髭のようになっている。赤すぎるのは良いとしても口の右端から何かが飛び出しているようにも見える。ごく小さな人間の頭と片手が出ているようにも見える。
女の右手の小枝の所に何かいる。上から降りて来た大蛇の様だ。女が手に持つ人間に喰い付いている。木の実(どんぐり)を目にした灰色の大蛇と、それに重なったた茶色っぽい大蛇の二匹が見える。女は大蛇に人間を与えているらしい。
空中の木の実(どんぐり)は大蛇の眼にしか見えない。瞳が縦線になっていてまさに恐ろし気な爬虫類の目である。
左手の輪郭がおかしい所がある。中指の内側は明らかに手前にある何かによって一部隠れている。イラストにしたように僕には女の手の下に人間が大勢いると見えた。上方から来る大蛇に与える為かまたは自分で食べる為に捕まえているのだろう。
全体図だとこういうイラストが描けた。女の顔の前だけでなく、頭の後ろにも大蛇が被さっている。女の顔の前後の小枝は、その実小枝ではなく大蛇の胴体の模様になっている。手前のテーブルのような窓枠のような物は恐らく大蛇の胴体であろう。呑み込んだ人間が無数に透けて見えている。銀の化粧瓶のような物にも人間の形が見られるからひょっとしてこれは人間を呑み込んだ、とぐろを巻いた蛇の表現ではないか。
これほど蛇に満ちた表現はあまり見ない。蛇の頭を中心に表現し、その口に人間が喰い付かれると言う形はよく見るが、気持ちの悪いニョロニョロした胴体をこんなにはっきりと入れる事はあまり無い。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 「洗礼者ヨハネ」 1514年頃 ルーブル美術館
蛇に満ちた表現として思い出すのはこのダヴィンチの作品である。この絵は以前見たが、何度も見返すとまたはっきりとして来た。ロセッティ同様人物に大蛇が絡みついている。この人物もその大蛇たちに小さな人間を与えている。(ロセッティはイタリア系イギリス人であり、ラファエル前派とも言われるのでダヴィンチのこの絵にも影響されたかもしれない。)
人間は蛇(型生命体)に喰われる存在である。