ムンク 「継承(Inheritance)」 1897~1899年 オスロ・ムンク美術館
Google Art &Cultureによれば、この作品はムンクが病院の待合室で見た光景を描いたとの事。梅毒が遺伝し、瀕死となった我が子を抱いて悲嘆の涙に暮れる母親だそうだ。子供は病気のために頭が肥大し、手足が小さく、胸に赤い発疹が出来ている。
ムンク自身幼いころ母を病気で失い、14歳の頃姉をまた病気で亡くす経験をしている。病気による死をテーマにした絵が多いようである。この絵ではそんな病気による死を伝統的な聖母子画像になぞらえた構図にしてある。
この絵にもおかしい箇所がたくさんある。
病院の待合室で醜く変形した瀕死の子供を素っ裸にして人目に晒しているのもどうかと思うが、それよりも子供の四肢、特に右手がやけにうすぼんやりとしている。肩との境目がはっきりしている。じっとその部分を見ていると右腕の途中に眼が見え、蛇の頭が見えて来る。蛇の連結表現がされている。これは右手がすでに無く、蛇がそれに成り代わっているのだろう。右足はその付け根の所に蛇が這っていてよく見えないが多分切れている。左足は先の方で蛇に喰われている(布に包まれて見えないのではない)。子供の頭には蛇が何匹も張り付いていてそれで頭が大きく見えている。そして首の部分、体と頭が繋がってない。切られている。それで胸に血が飛び散っているのだ。
右手と首を切られて瀕死の子供。左目は既に死体の眼になっている。
泣いて目を真っ赤に腫らしている母の顔。
・・・・いやまてこの口は何だ。まるでハンバーガーを食べるように、大口を開けて何かを喰っている。
この女は例によって蛇に巻き付かれている。帽子も蛇で出来ていてその赤い飾りも蛇である。背後の壁に大蛇画像が隠し込まれている。女の向かって右側には大口を開けて威嚇するコブラのような蛇が見えた。
口に当てたハンカチの中に子供の手の形がうっすらと見て取れる。手首の方から齧りついているらしい。
女のスカートが巨大である。靴の先が少しでも見えても良さそうなのに見えない。
床は女の足元だけ真っ赤である。ベンチの下の暗がりに何かいる。
この巨大なスカートの中身を想像してみた。右のイラストは多分に推測がある。スカートの皺等を辿るとこんな感じの半身大蛇の女になるかもしれないと思った。下半身のみが大蛇になっていて、スカートの中で足に似た形でくねり、後方へ流れて行く。聖母マリアの画像によくある形である。
ルネサンス期の聖母子像は半身大蛇の悪魔アリアが生贄の子供を喰う図柄が多かった(もちろん隠し絵になっていたが)。ムンクはそれを知っていて模したのだろう。
ハンカチの部分の拡大図。ハンカチ右側に薄黄色い部分があり、これが女の口元まで繋がっているように見える。女の手より小さい手首を女が咥えて喰っている。ずいぶんと露骨な表現である。