まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の 花ある君と思いけり
やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に 人こい初めしはじめなり (島崎藤村 初恋より)
小田原の畑に植えてあるアジサイが咲き始めた。満開のアジサイもいいが、咲き始めの初々しい花もいい。つぼみがまるで宝石のように輝いている。(絵ではどうもうまく描けないが)
冬枯れの間栄養分を根に蓄えじっと春を待っていた。新芽を出し、茎を伸ばし、葉を新生し、つぼみを付けた。これから花を咲かせようという時だ。この時のために1年をかけた。これから起こる開花・受粉のために生きているのだ。
初恋の胸のときめきを思い起こす。
実は僕は「野菊の墓」(伊藤左千夫著)のタミさんのイメージを心の隅でいつも追い求めているようだ。・・・・「タミさんは、野菊のような人だ。」・・・・
自然で、素朴で、野に咲く花のような女性をいつも求めてきた。
現実にはそんな人はいないから花の美しさに魅かれるのかな。