名画の中の人喰い蛇

美術品が教えてくれる命の意味を農作業しながら考える。

ゴヤ 「我が子を食らうサテゥルヌス」 蛇神の食糧としての人間の増産を計る絵

猛暑の中での農作業が辛い。夏野菜の収穫のピークであり、雑草取りのピークでもある。そんな中で血も凍るような「怖い絵」の検討をする。

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フランシスコ・デ・ゴヤ 「我が子を食らうサテゥルヌス」 1819~23年 マドリードプラド美術館

この絵は十代のころから複製画で見知っていた。宮廷画家のゴヤが王室家族の綺麗な絵ばかりを描いてきたその反動から一方でこんな暗い、恐ろしい絵を描いていたのだと思っていた。このブログの題材としてはあまりにも「人食い」が露骨に描かれているので返ってふさわしくないと思っていた。しかしこの絵は残酷な表現の中にも他の名画と全く同じテーマが隠されている事が分かった。

ローマ神話の中に「我が子に殺されると予言されたサテゥルヌスは、予言の実現を恐れ、我が子を次々に呑み込んで行った。」と言う話があり、その話を見る者に恐怖を抱かせる恐ろしい表現で描いてある。僕も最初見た時はその残酷さの表現に驚き、他の要素を全く受け入れて無い事に今更ながら気付いた。

すなわち、①食らう我が子は子供か赤ん坊であると思うがこの絵ではまるで成人のような体つきの小さな人間である。

②サテゥルヌスの手足の長さ、バランスがおかしい。左肩や右足が異様に突き出ている。

眼をそむけたくなるような残酷な絵も、見る者が抱く「恐怖」の正体を知ればさほどの事はない。むしろ隠された「人食い蛇」の存在の方が人間としてはよほど怖い。

なおこの絵のサテゥルヌスの股間には勃起した陰茎が描かれてあったのを修正されているそうである。

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他の名画同様、詳細に見ると人間の身体と蛇で描かれているのが見えて来た。部分部分を見ると人間の身体を並べてサテゥルヌスの顔を形作っており、またその人間は蛇にも見えるようになっている。例えば喰われる人間の腕は小さな人間の集まりであり、同時に蛇の頭になっている。大抵の蛇の口先には人間が咥えられている。蛇にも見え人間にも見えると言う事は、この神話の神は人間の遺伝子と蛇の遺伝子を合わせ持っている事を伝えているのではないか。

鼻は蛇の頭であると同時に人間の頭(頭蓋骨)であり、目は白蛇であると同時に人間の股から這い出る赤ん坊であるらしい。

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喰われる子供の右の尻にうっすらと眼が見える。ここを頭として、両手を下にぶらりと下げた人間が隠れていた。足が手で、手が足になる例の手法である(上のイラストではこの人の足はサテゥルヌスの右手の中にあると思ってこんな風に黄色く示したが、下のイラストのようになるのかもしれない。つまり尻が肩になる)。

その他、腹の辺りの暗い所に後背位でセックスをしている人間が見えたり、人間の尻辺りから子供が生まれ出ているように見える所もある。

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サテゥルヌスの身体を詳細に見ると、人間と蛇が隙間なく集まって形作っているのが分かる。左肩は四つん這いのような格好の人間であり、背後の暗い部分にその人に覆いかぶさる人間がいる。性交しているらしい。右手は尻を下にして足を上げた人間である。尻から子供を出産している。異様に長い右足は人間を横から見た所で、膝が肩に、足の付け根が尻になっている。暗い部分に頭と眼が見える。これも尻から子を出産している。光の当たった左足は排便スタイルの人間で、頭を大蛇に呑まれている。この人も出産している。

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左は全体図元絵。少し明るくしてある。右はそのイラスト。僕にはこんな風に見えた。サテゥルヌスは小さな人間の右足(左手ではなく)を口に入れている。真っ赤な蛇が上から降りて来て逆さになった人間の尻に乗り、切断面に見せているだけである。大抵の人は騙されて、子供の頭を齧り取って血だらけになっていると見るようになっている。

サテゥルヌス自身も蛇と人間の集合体であり、顔も髪の毛も同様である。

背景の暗い部分にもセックスをする人間、出産をする人間が隠れている。

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またこんな隠し絵もある。上から見ると、まずサテゥルヌスの顔・髭が尻を高く上げた女であり、この女に後ろから覆いかぶさる男が背景の暗い中にいる。

サテゥルヌスの右足を左足とする女がいる。上半身は暗い中にあって見付けにくい。その背後からサテゥルヌスと左足を共有する男がこの女の腰を抱えて性交している(ちょうどサテゥルヌスの男性器があるはずの部分にこの男の股間がある)。

一番下に大きな女が背を上にして倒れている。この女の尻の割れ目辺りにサテゥルヌスの左ひざがある。光が当たって目立つこの左ひざは男性器を表しているかもしれない。

上図右がいつもの蛇神のイラストである。上から横から出て来て全てを喰っている。サテゥルヌスの左肩を頭とする巨大蛇神が横から顔を出しているが、喰われる「我が子」の両足がこの蛇の牙に見える。

 

神話のテーマを題材にしてはいるが、それと関係なく他の名画と同じテーマ「蛇神の食糧としての人間の増産」が描かれている。蛇神はありとあらゆる手段でもって家畜人間を増やそうとしている。人間はスペインの生んだ宮廷画家ゴヤの名画と言う事で、敬意を持ってこの絵を鑑賞するのだろうが、実はこんな隠し絵を脳裏に(無意識のうちに)刻み込まされているのである。