名画の中の人喰い蛇

美術品が教えてくれる命の意味を農作業しながら考える。

ムリーリョ 「アレクサンドリアの聖カタリナ」 嘘で固められた殉教者の話

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ムリーリョ 「アレクサンドリアの聖カタリナ」 1645~50年頃 三重県立美術館

アレクサンドリアの知事の娘カタリナは、ローマによるキリスト教迫害をやめさせた穢れなき処女殉教者として崇拝されている。ロシアでエカテリーナ、フランスでカトリーヌ、アメリカでキャサリンと言う女性名は彼女の名から採られているのだと思う。

このムリーリョの絵のカタリナは王宮っぽい柱と、頭の上の王冠、斬首刑にされた道具である剣のみがアトリビュートとして添えられ、他の絵に見られる拷問用の車輪とかは描かれていない。天使が祝福の意味で棕櫚を持って飛んでいる。

この人は立っているのだろうか、跪いているのだろうか下半身の寸法がおかしい。黄と白の衣の彼女と背景のコントラストが大きく、スポットライトを当てたように際立っている。こういう場合、この暗い背景の中に秘密が隠されている場合が多い。

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彼女の下唇から飛び出しているのは・・・・小さな人間である。まるでレバ刺しを喰っているかのようにして人間を口の中に入れている。髪の毛に見えるのはそこに乗せられた人間である。大きい人間も小さい人間もいる。

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彼女の纏った衣も全て人間である。結構大きい人間もいて、彼女の腰の辺りで尻を見せながら前屈して身体を支えている。過去に呑み込んだ人間が透けて見えており、これから食べようとする人間を体中に乗せている。食べ放題の焼き肉店に来た化け物の図である(最も彼女は生肉を好むので焼いてはいないが‥‥)。

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彼女の身体には何体もの人間の身体が重なっている。

上図左。彼女の両手は隠された人間の手と足である。背後に黒い影となって一部が見えるがその手足は光が当たって両手に見えるようになっている。

上図右。後ろ向きの、片膝を付いた人間が見える。女の左足と見える部分はこの人間の左足で、その下肢は後方に折れ曲がっている。頭と肩、左手と赤い尻が露呈している。この人間が下半身を作っている為に彼女の下半身は中途半端に見えるのだ。

すなわち彼女の身体は彼女自身の身体ではない。人間が幾重にも重なって形作っている架空の女なのである。この殉教者はでたらめな作り物であり、その事は手が足であり、体の裏表が逆になっている事からも分かる。

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空から女を見る天使。疑いの目でもって彼女を見下ろしている。祝福している顔ではない。

またこの天使も人間を喰っているらしい。と言うのは髪が人間の身体で出来ており、翼・棕櫚も人間で出来ているからである。左右の手で掴んでいるのは小さな人間であろう(元絵の画素が荒くて細かく見れなくて残念だ)。

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全体図のイラスト化。左が元絵、右が僕の眼に見えるこの女の正体。女の足元にも人間が転がっている。剣の房飾りに見える部分は真っ赤だから、その剣で切られた人間の身体かもしれない。背後の床にも人間が寝ている(イラストで青)。大量の食糧を前にして喜んで喰っている図である。

女の背後、向かって左側の影はたたずむ男の影にも見える。なぜ男と分かるかと言うと、その陰の下方(女の右足辺りの横)に男性器が露出しているからである(イラストでは黄色くした)。毛の無い横向きの男性器である。この事で彼女が「穢れなき乙女」と言うのが嘘っぱちである事が示されている。男の影が少なくとも三人彼女の身体に重なっているではないか。

嘘で固められたキリスト教の殉教者の話も、名画の中に真実を描き込んであるのが面白い。宗教で人間を支配する者も真実を隠す事はしない。己を人間に神と呼ばせる者も根は正直なのかもしれない。

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この女、マリアと同じように大蛇の身体が後方に繋がっている。

蛇神がこの女をも喰わんとしている。天使も喰われている。そして全体的に全ての生き物を呑み込む存在が一番大きな蛇神である。