名画の中の人喰い蛇

美術品が教えてくれる命の意味を農作業しながら考える。

デューラー「聖三位一体」 化け物の絵を有難がって拝む、眼の見えない信者たち

デューラーの作品には蛇っぽい所がはっきりとは見えなくて難儀していた。この作品でようやくそれらしい表現が見えた。

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アルブレヒト・デューラー 「聖三位一体」 1511年 ウィーン美術史美術館

教会の礼拝堂の祭壇画として描かれた絵である。神とその子(イエス)と精霊(鳩で象徴されている)の三者は一体であると説明する。雲の上の天国のような位置に僧侶・聖職者・信者たちが大勢集まっている。その上の段左右に聖母マリアを始めとする殉教者たち、洗礼者ヨハネを始め、モーゼやダビデ王等が描かれている。その中央にイエスがおり、それを支えて持つ父なる神と天使たちが宙に浮かんでいる。その上に鳩の姿をした精霊がいて、その周りに天使の子供のような翼の付いた顔が囲んでいる。

これは宗教上の階級を表しているのだろうか。キリスト教を信じる者は雲の上の神の国に入る。殉教者はその上の段階に登れる。神と子と精霊を信じる者のみが救われることを絵にしてこれを見せながら説教をしたのだろう。

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元絵に画質変更とボカシを入れると上図左になる。イラスト化したのが右。化け物の顔が正面を向いている。口を大きく開けてその牙のある歯で人間を喰っている。向かって左側には骸骨もあって恐ろしい。

この絵全体を薄暗い礼拝堂の中で一人で見たら、こんな絵が見えるだろう。しかし誰も気付かない。この絵には神様イエス様という有難い存在が描かれていると教えられているので「化け物の絵だ。」などとは誰も思わないし、キリスト教が「悪魔教」だとは思ってないのでそうは見ない。東博の国宝千手観音像と同じである。

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神とイエスと精霊の鳩。デューラーは細かい所まで非常に丹念に描き込む画家であり、蛇っぽい部分が探しにくい。むしろ不自然と思われる部分を指摘してそこから探ってゆきたい。

全く違和感のない絵ではあるが、考えてみればおかしいのは、神が金の王冠を被り、金の衣を纏っている事・右の天使が首を傾げている事である。また鳩の周りの人面鳥もちょっとグロである。左の天使は槍先に肉塊の様な物を刺しているのもよく分からない。

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エスを口の所に当てる巨大な蛇神が見えた(イラストで水色で表した)。神の像に喰い付く蛇・鳩の後ろで口を開ける別の蛇も見えて来た。左右の天使たちはそれぞれ集まって上から降りてきた蛇神の姿を形作っている(イラストでは緑で表した)。それは東洋の龍のようにひげを持つ蛇で、一番前の天使を咥えているらしい。右の天使が首を傾げているのもイエスが力無い表情なのも後ろの蛇に喰われているからだろう。

エスの左右の殉教者たちもまた寄せ集まって(寄せ絵で)巨大蛇の横顔を作っている。マリアと洗礼者ヨハネを口にしているようである。

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画面の下の方を見てみると、マリアと洗礼者ヨハネの身体が途中から大蛇に変わって下方に続いているように見えた。

雲の上にいる人々も寄せ絵で巨大な蛇の顔を作っていて、人間たちをその体内に取り込んでいる事を示している。

下の雲は生贄にされた人間である。(前回のブリューゲルでも残酷な人間の死体の表現があり辟易していたのだがここにもあった。)キリスト教信者たちの足元で踏みつけられて転がって大蛇に喰われている(イラストでは黄色)。地上にも人体が横たわっている。

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画面全体をまた別の見方で見ると上のイラストのようになった。茶や青色・緑の輪郭線で表した。一つの絵で何通りにも見える。大きく見ても小さく見ても人間を喰う蛇の絵が見えて来る。

ミケランジェロの「最後の審判」同様、この絵も「寄せ絵」で描かれた蛇神の食人図であった。